No.1669 2006.10.17.
発行 泉北教職員組合

大阪弁護士会も
「教育基本法改正案に関する意見書」で改悪反対を表明

 先週の「泉北教育」でも紹介したように、大阪弁護士会は現在の臨時国会で継続審議中の教育基本法改正案についての改悪反対の意見書を首相・文部科学相・衆参両院議長らに送付しました。
 教育関係者でなく、法律の専門家による教育基本法改悪反対の声は、私たちを勇気づけてくれるものです。
 今週は、その意見書の抜粋を紹介します。

一 はじめに

 臨時国会において教育基本法改正が目指されるという。同法の改正については多くの重要な討議すべき点が存在することを踏まえつつ、当会としては、この期に当たって少なくとも以下の点において、現在継続審議中の法案には反対し、教育基本法の改正の要否と内容や教育の改革についてより徹底した国民的議論を行うことを求めるものである。

二 憲法と教育基本法

 教育基本法は、憲法13条及び26条を受けて、国を名宛人として教育の基本理念を定めたものである。したがって、憲法が国家に制約を課すものであるのと同様に、教育基本法も国家に対して憲法理念による制約を課しているのである。
 国が教育とどう関わるかについて、最高裁判所は、旭川学テ判決において、国が、子ども自身および社会公共の利益のため必要かつ相当と認められる範囲内において、教育内容について決定する機能を有するものとしたが、その際子どもが「自由かつ独立の人格として成長することを妨げるような国家的介入、例えば、誤った知識や一方的な観念を子どもに植えつけるような内容の教育を施すことを強制するようなことは、憲法26条、13条の規定上からも許されない」とした。教育基本法の改正にあたっては、この判決に立ち返り、その当否を吟味しなければならない。

三 教育の目標に徳目を定めることの危険性

 改正案は教育の目標の中に、「公共」の精神、道徳心、日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する態度を育てることなどの徳目を加えた。
 しかし、このような徳目は本来極めて多義的な内容を含み、しかも人格形成に関わるものであり、憲法の保障する精神的自由に属する事柄である。特に、子どもは、成熟した判断能力と教養等を獲得していく発達途上にあるから、公権力が多義的な徳目について教育することについては、精神的自由を侵すことがないように、また「誤った知識や一方的な観念」を教えることのないように、とりわけ慎重な配慮が必要である。
 ところが、法律によって教育の諸目標に徳目が定められれぱ、多義的な徳目の内容が、法律の制定・解釈・適用を行う際に、時の政治的影響下で、画一的なものとされてしまうおそれがあり、誤った知識や一方的な観念を教え、子どもに対してその影響を受け入れるように強いることにつながりかねない危険がある。特に、「国を愛する心」「国を愛する態度」を法制度の中で定め、画一的解釈・適用に委ねられるとすれば、多様な解釈を排除することになり、特定の解釈を正しいものとして受け入れるよう強制されることになりかねない。そうなれば、明らかに子どもの精神的自由が侵害されることになる。さらに、このような画一的価値の教育の強制は、教育専門家たる教師の「教育の自由」にも抵触する。
 したがって、徳目、とりわけ愛国心について、多様な解釈を排除し、特定の解釈を強制するおそれのある法制化には強く反対する。

四 教育は国その他の勢力によって不当に支配されてはならない

 改正案では、法律による国の教育への介入が無制限に容認される危険性がある。
 また、改正案は政府に教育振興基本計画を策定する権限を新設し、その範囲は教育の理念、学校・教員のあり方、研修制度、評価システムなど広範な分野におよぶという。しかし、教育振興基本計画は政府が決定して国会に報告するもので、法律でもなければ国会の承認を得る手続きすら予定されていないことからさらに問題は大きい。同基本計画の導入は、法律でも不当に介入してはならない教育の分野に関して、民主的手続さえも踏んでいない行政機関の介入を正当化することになり、教育がその時々に不当に支配される危険がさらに増すであろう。そうであれば、教育行政は教育の内容に介入する根拠を得、時の政権の意向を受けた教育行政が容易に進められることとなる。

五 おわりに

 現在、子どもが直面している問題は、大人社会のゆがみが子どもに投影されたものであり、実に様々な要因が関わっている。これらに対しては、国民一人一人が、自律的でかつ社会的責任を負った主権者として、この国に豊かな創造性と希望をもたらす次世代の教育を考えて、大いに知恵を絞らなければならない。教育改革については、教育現場の問題点も含めて幅広い角度から十分に検証し、分析し、原因や背景事情を見極め、徹底した国民的議論がなされなけれぱならない。
 以上述べたように、当会は、現在の法案に対しては、愛国心を含む徳目条項を教育の目標とする点と、国による教育への不当介入の問題点について、憲法に適合しないおそれがあることから強く反対し、教育基本法の改正の要否と内容について、さらには子どもの直面する教育の問題解決のための教育改革について、徹底した国民的議論を行うことを求めるものである。
以上





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